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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)643号 判決 1957年12月10日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

所論は、利息制限法に違反した事項を目的とする条項を記載した本件公正証書は、公証人法二六条に違反するから、本件強制執行は許されないと主張する。しかし公証人法二六条の規定は、同条に違反して作成された公正証書が当然に債務名義たる効力を有しないとする趣旨を含むものではない。そして公正証書に記載された法律行為の一部が無効であつても、その無効が法律行為全部の無効を来さない限り、請求異議の訴にもとづき右公正証書の執行力を全面的に排除することはできないと解すべきである。本件において原審が、その確定した事実関係にもとづき、本件貸借に利息制限法に違反する部分があることを認めこれを無効としながら、他の有効に成立したと認められる部分につき本件公正証書による強制執行を許すべきものとし、上告人の請求の一部を棄却したのは正当である。所論は採用できない。

同第二点について。

所論は、原判決は、上告人の錯誤の主張について明らかな審理判断をしていないから審理不尽、理由不備の違法があると主張する。しかし原判決の理由(ロ)の部分を精読してみると、所論錯誤の点は、上告人の主張を誤りなく摘記し、これに対し証拠を挙げて結局所論摘示のように所論のような錯誤はなかつた旨判断したのであつて、証拠と説明とを対照してみるとその判断は首肯するに十分であり、所論のような違法は認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

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